心に残った歌

今までに心に残った歌(1970年代~)

いちご白書をもう一度


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フォーク・グループである「バンバン」の楽曲。1975年8月1日に、同グループの5枚目のシングルとしてCBSソニーからリリース。
作詞・作曲: 荒井由実ユーミンさん)、編曲: 瀬尾一三


言わずと知れたユーミンさんこと、まだ松任谷の姓になる前、「荒井」姓のときに作った名曲です。話は全く違うようで、実はそうでもないのですが、今年は共産党が誕生して100周年にあたる年だそうです。僕は毎週映画のサイトで公開される映画をチェックしているのですが、そのサイトで共産党の映画を紹介していました。その映画で「100周年」ということを知ったのですが、結党100周年という区切りの年ということで映画を製作したようです。

 

僕は学生時代、いわゆる「ノンポリ」でした。「ノンポリ」とは「ノンポリティカル」の略で「政治に関心がない人」のことですが、実はこれも友だちに教えてもらった知識ですが、それはともかくバイトと麻雀に明け暮れていた学生時代でした。高校時代はバレーボール部に明け暮れていましたので、その反動として遊び暮らしていたのでした。しかし、僕より一世代前の人たちは「世の中をよくしよう」という意識の元、政治に強い関心を持っていた人たちがたくさんいました。

 

しかし、そうした学生たちでも、広い視点でながめますと、学生運動にのめり込む人というのはやはり一部の人たちで総体的に考えますと政治に対して傍観者の人の方が多かったように思います。それを表しているのが

 

♪僕は無精ヒゲと 髪をのばして
♪学生集会へも 時々出かけた

 

♪就職が決まって 髪を切ってきた時
♪もう若くないさと 君にいいわけしたね

 

学生と社会人は違うんだ、という認識でいたことがわかります。僕は以前「真夜中のダンディ」という桑田佳祐さんの歌を紹介したことがありますが、桑田さんはその年代の人たちに対して、学生運動の反動としての体制に従順になっていた大人たちを批判していたように思います。実は、僕も桑田さんに同意見なのですが、口先だけ反体制を叫んでいた人たちが学生を卒業する段になって、あっさりと寝返ったことに不満を持っていたのでした。

 

今回、この歌を取り上げるきっかけになったのは、先ほどの「共産党の映画」なのですが、それ以外にも70年代に学生運動にかかわった人たちに関する記事を多く目にしたこともあります。例えば、日本赤軍のリーダー格だった重信房子さんが出所したことも一つです。それに関連して当時のことを綴った本なども出版されていますが、そうした記事を読んでいましたところ、その流れでこの楽曲が思い浮かんだわけです。

 

学生というのは実に気軽で無責任な身分で、僕がそうであったように責任を負わなくてはならないことがなにもありません。責任を負わなくていい状況というのはなににも縛られないことでもあります。就職をしますと、会社の指示や命令、上司や先輩の考えに従わなくてはいけない義務が生じます。そうしたさまざまな縛りから解放されている状態が学生です。

 

ですから、学生デモに参加できたのも自由でいられたからにほかなりません。ですが、そうした自由がなくなると、「無精ひげや髪を切らざるを得なく」なります。しかし、本当はそれ以外の選択肢もあったはずです。就職ではなく、どこにも所属せずに働く方法です。そうした状況で就職を選択したということは、自分自身でその道を選んだことになります。そして、上司や会社の命令に従うことになんの疑問も持たなくなっていきます。多くの学生たちが…。

 

そうした若者の心の変遷を掬い取ったのがユーミンさんでした。実は、ユーミンさんは僕より少しばかりの年長に過ぎないのですが、ということは実際は学生運動はもう下火になっていたはずで、この歌詞が思い浮かぶ年齢ではないはずなのですね。それにもかかわらず、こうした歌詞を作れるということは、自分よりも少し年齢が上の方々とのつき合いが多かったのではないか、と想像します。

 

前にも書いたことがありますが、ユーミンさんは大学生を自宅に招きパーティのような催しを定期的に行っていたそうです。そのときの若い人たちの会話の中から作詞のヒントになる時代の雰囲気を見つけていたようです。そのパーティにときおり参加していた、作家の田中康夫さんがなにかの記事で書いていました。

 

学生運動が下火になったのは、連合赤軍事件がきっかけだったと言われています。簡単に言いますと、内輪もめで殺人が行われていた事件ですが、世の中をよくするために仲間をリンチ殺人をしていては一般の人たちから共感を受けるわけがありません。おそらく学生運動に参加しはじめた頃は純粋な気持ちだったのでしょうが、のめり込みすぎると善悪がつかなくなるのかもしれません。

 

その意味で言いますと、「就職が決まって 髪を切る」くらいの学生運動へののめり込み具合がちょうどよいレベルともいえそうです。今回安倍元首相を襲撃した犯人はお母様がある宗教団体にのめり込み過ぎて破産したことが背景にあるそうです。どんなことでもそうですが、「のめり込んで」いいことなど一つもないようです。自分を見失ってしまうからです。

 

自分を俯瞰できるくらいの余裕は常に持っておくことはとても大切です。

 

それでは、また。